「感染症」発生情報【病名の解説】
 
       
  ●ヘルパンギーナ●(Herpangina )  
    ヘルパンギーナは、発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性発疹を特徴とし、夏期に流行する小児の急性ウイルス性咽頭炎であり、いわゆる夏かぜの代表的疾患である。その大多数はエンテロウイルス属、流行性のものは特にA群コクサッキーウイルスの感染によるものである。
毎年5 月頃より増加し始め、6〜7月にかけてピーク を形成し、8月に減少、9〜10月にかけてほとんど見られなくなる。患者の年齢は4歳以下 がほとんどであり、1歳代がもっとも多く、ついで2、3、4、0歳代の順となる。
 
 
    <症状>    
    2〜4 日の潜伏期を経過し、突然の発熱に続いて咽頭粘膜の発赤が顕著となり、口腔内、主として軟口蓋から口蓋弓にかけての部位に直径1〜2mm 、場合により大きいものでは5mmほどの紅暈で囲まれた小水疱が出現する。小水疱はやがて破れ、浅い潰瘍を形成し、疼痛を伴う。
発熱については2 〜4 日間程度で解熱し、それにやや遅れて粘膜疹も消失する。発熱時に熱性けいれんを伴うことや、口腔内の疼痛のため不機嫌、拒食、哺乳障害、それによる脱水症などを呈する ことがあるが、ほとんどは予後良好である。
 
    <治療・予防>    
    通常は対症療法のみであり、発熱や頭痛などに対してはアセトアミノフェンなどを用いることもある。時には脱水に対する治療が必要なこともある。 
 
 
 
     
  ●感染性胃腸炎●  
    多くの細菌、ウイルス、寄生虫が本疾患の起因病原体となりうる。細菌性のものでは腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクタなど、ウイルス性のものではSRSV 、ロタウイルス、腸管アデノウイルスなどがみられる。寄生虫ではクリプトスポリジウム、アメーバ、ランブル鞭毛虫などがあげられる。
 感染様式は、地域での散発、流行疾患としては、感染患者からの糞口感染、食品媒介感染症としては、汚染された水、食品からの感染である。
 
    <臨床症状>    
    原因となる病原体、あるいは感染様式、感染菌量、宿主の状態により異なるが、発熱、下痢、悪心、嘔吐、腹痛などが見られる。当初発熱が先行し、嘔吐、下痢など腹部症状が遅れて出現することもある。多種多様な病原体によりおこるため、また、食中毒、外科的疾患、炎症性腸疾患などを鑑別するためにも、症状、所見、経過、便性状、腸管外症状、患者背景、季節性、海外渡航歴、ペットの飼育などを参考にして確定診断につなげる。
検査所見では特異的なものは見あたらないが、一般に細菌感染症では白血球数、赤沈、CRPなどの増加が見られる。糞便の肉眼観察、顕微鏡による観察は、膿球(白血球)、カンピロバクタ、寄生虫などの確認に有用である。糞便の細菌培養、ウイルス分離、便中抗原検出などが病原体診断のために行われる。
 
 
    <治療・予防>    
    治療は、ウイルス性のものでは対症療法が中心となるが、細菌性、あるいは寄生虫によるものでは病原体特異的な治療を行う必要がある。種々の病原体に対する特異的な予防方法はなく、食中毒の一般的な予防方法を励行することと、ウイルス性のものに対しては、流行期の手洗いと患者との濃厚な接触を避けることである。いずれの病原体においても院内、家庭内、あるいは集団内での二次感染の防止策を考慮することが肝要である。
また、汚染された水、食品が原因となっているものでは集団食中毒の一部を捉えていることも考慮に入れ、原因を特定するために注意深い問診を行うことが、感染の拡大防止や広域集団発生の早期探知につながる。
 
 
 
         
  ●手足口病●  
    手足口病(hand, foot and mouth disease:HFMD)は、その名が示すとおり、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス感染症で、幼児を中心に夏季に流行が見られる。本疾患はコクサッキーA16(CA16)、CA10、エンテロウイルス71(EV71)などのエンテロウイルスによりおこり、基本的に予後は良好な疾患である。
本症は4歳位までの幼児を中心とした疾患であり、2歳以下が半数を占めるが、学童でも流行的発生がみられることがある。国内における手足口病流行のピークは夏季であるが、秋から冬にかけても多少の発生が見られる(「グラフ総覧」参照)。
ヒト-ヒト伝播は主として咽頭から排泄されるウイルスによる飛沫感染でおこるが、便中に排泄されたウイルスによる経口感染、水疱内容物からの感染などがありうる。
 
 
    <臨床症状>    
   

3〜5日の潜伏期をおいて、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2〜3mmの水疱性発疹が出現する(図)。時に肘、膝、臀部などにも出現することもある。
 口腔粘膜では小潰瘍を形成することもある。発熱は約1/3に見られるが軽度であり、38℃以下のことがほとんどである。通常は3〜7日の経過で消退し、水疱が痂皮を形成することはない。
 

 
    <治療・予防>    
    特別な治療を要しないことがほとんどである。発疹にかゆみなどを伴うことは稀であり、抗ヒスタミン剤の塗布を行うことはあるが、副腎皮質ステロイド剤などの必要はない。口腔内病変に対しては、刺激にならないよう柔かめで薄味の食べ物を勧めるが、何よりも水分不足にならないようにすることが最も重要である。薄いお茶類、スポーツ飲料などで水分を少量頻回に与えるよう努める。ときには経静脈的補液も必要となる。
発熱に対しては通常解熱剤なしで経過観察が可能である。しかし、元気がない、頭痛、嘔吐、高熱、2日以上続く発熱などの場合には髄膜炎、脳炎などへの進展を注意する。予防としては患者に近づかない、手洗いの励行などである。患者あるいは回復者に対しても、特に排便後の手洗いを徹底させる。
 
 
 
 
  ●A群溶血性レンサ球菌咽頭炎●  
    A群溶血性レンサ球菌咽頭炎はいずれの年齢でも起こり得るが、学童期の小児に最も多く、3歳以下や成人では典型的な臨床像を呈する症例は少ない。感染症発生本疾患は通常、患者との接触を介して伝播するため、ヒトとヒトとの接触の機会が増加するときに起こりやすく、家庭、学校などの集団での感染も多い。
動向調査のデータによると、冬季および春から初夏にかけての2 つの報告数のピークが認められている。急性期の感染率については兄弟での間が最も高率で、25%と報告されている。
 
 
    <臨床症状>    
    潜伏期は2〜5日であるが、潜伏期での感染性については不明である。突然の発熱と全身倦怠感、咽頭痛によって発症し、しばしば嘔吐を伴う。咽頭壁は浮腫状で扁桃は浸出を伴い、軟口蓋の小点状出血あるいは苺舌がみられることがある。 
猩紅熱の場合、発熱開始後12 〜24 時間すると点状紅斑様、日焼け様の皮疹が出現する。顔面では通常このような皮疹は見られず、額と頬が紅潮し、口の周りのみ蒼白にみえる(口囲蒼白)ことが特徴的である。
また、舌の変化として、発症早期には白苔に覆われた舌(white strawberry tongue )がみられ、その後白苔が剥離して苺舌(red strawberry tongue )となる。1週目の終わり頃から顔面より皮膚の膜様落屑が始まり、3週目までに全身に広がる。
合併症として、肺炎、髄膜炎、敗血症などの化膿性疾患、あるいはリウマチ熱、急性糸球体腎炎などの非化膿性疾患を生ずることもある。
 
 
    <治療・予防>    
    治療にはペニシリン系薬剤が第1選択薬であるが、アレルギーがある場合にはエリスロマイシンが適応となり、また第1世代のセフェムも使用可能である。
予防としては、患者との濃厚接触をさけることが最も重要であり、うがい、手洗いなどの一般的な予防法も励行する。接触者に対する対応としては、集団発生などの特殊な状況では接触者の咽頭培養を行い、陽性であれば治療を行う。
 
 
 
     *感染症情報センター  
    http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/index.html
 
 
 
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